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大量生産大量廃棄と言う現実
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。2015年9月の国連サミットで採択された、17のゴールと169のターゲットからなる国際目標です。ビジネスの果たす責任や、地球環境の保全に関して取り組む目標です。今後、企業としてSDGsの取り組みに消極的だとユーザーから見なされると、批判にさらされたり不買運動に発展する可能性もあるので、避けて通れない課題になって来ていて、各国が目標を達成する必要がある事項です。
しかし、日本のアパレル業界はこのSDGsの流れに全く逆行するような大量廃棄を行っています。このまま大量廃棄を少なくすることに取り組んで行かない状況が続くと、持続可能な生産のパターンとは言えず、地球環境にもダメージを与え、さらに発展途上国の縫製工場の労働環境なども問題になる可能性が高いと思います。
食品ロスはマスコミでも多く取り上げられているので、一般の人も関心を持っていますが、アパレルの大量廃棄はまだ、一般には知られていないので、注目度は低いですが、今後、大問題に発展する可能性もあります。
アパレル製品(衣料品)の国内の年間供給数量は約29億点。それに対し、消費数量は約14億点と推定されています。その差は約15億点。これが、消費者の手に渡らず売れ残ってしまった余剰在庫の数です。
引用元:アパレル廃棄(衣服ロス)の問題 – アパレル業界に求められるサステナビリティへの取り組み
この15億点の余剰在庫のほとんどは、再流通すること無く、焼却処分されます。1年間で焼却される量は100万トンとも言われています。
何故、再流通しないかと言うと、本来の価格から大幅に値引きした商品が流通してしまうと、ブランド価値を棄損してしまい、ユーザーがブランドから離れてしまうからです。
もう一つは、売れ残った在庫を倉庫で保管する保管料が高くつくので、廃棄してしまうのです。
フランスの反浪費法の概要
この法律は、循環型経済を促進し、廃棄物を減らすことを目的としています。以下がその主なポイントです:
- 未販売品の廃棄禁止
- 対象:衣類、家庭用電化製品、化粧品、書籍、玩具など、販売されずに余った新品の商品。
- 禁止内容:焼却や埋め立てといった廃棄処分。
- 例外:衛生上の理由やリサイクルが不可能な場合。
- リユースまたは寄付の義務化
- 未販売の商品は、再利用やリサイクル、あるいは慈善団体や社会福祉団体への寄付を行う必要があります。
- 寄付による支援対象には低所得者層やホームレス支援団体などが含まれます。
- 企業への責任拡大
- 企業は未販売品を適切に処理する計画を義務付けられ、政府に報告しなければなりません。
- 違反した場合、罰金が科される可能性があります。
背景
フランスでは、年間数十万トンもの衣類が廃棄されており、その多くは未使用のまま焼却処分されていました。特にファストファッション業界の成長に伴い、過剰生産が問題視されていました。この政策は、以下のような課題に対応するために制定されました:
- 環境への悪影響:
- 繊維の焼却は温室効果ガスを発生させ、埋め立ては長期的な環境汚染を引き起こします。
- 倫理的課題:
- 未使用の商品を無駄にする一方で、多くの人々が必要な物資を入手できない状況に対する批判。
影響
- 企業への影響:
- アパレルメーカーや小売業者は、未販売品の処分方法を見直さなければなりません。
- 在庫管理や生産量の最適化が求められ、企業のコスト構造に影響を与える可能性があります。
- 慈善団体の恩恵:
- 未販売品の寄付が増加し、低所得者層への支援が強化されました。
- 業界全体への波及効果:
- 他のEU諸国や地域でも、同様の措置を検討する動きが出ています。
フランスの取り組みは日本でも無視できない
フランスの反浪費法は、日本でも無視は出来ず、販売されずに廃棄される衣料品に対する問題を多くの人が感じるようになり、大量生産大量廃棄に対する厳しい目が向けられる可能性があります。
従来の大量生産で生産コストを抑えて、売れ残った商品は廃棄するようなビジネスモデルを転換する必要が出て来ます。
フードロスは土に帰るがアパレルは石油製品
フードロスは包装以外は廃棄しても土に帰るので、環境を破壊しませんが、アパレルのほとんどは石油製品で、天然素材の商品も縫製で使う糸は石油製品ですし、付属品もほとんどが石油製品なので、廃棄すれば確実に環境汚染になります。生地は綿でもファスナーなどの付属品などの素材は石油製品なので、土には帰りません。
使い古したり、購入したけど着なかった服は、オークションサイトなどでリサイクルされますが、売れ残った商品はほとんどリサイクルされずに廃棄されます。
古着としてアフリカなどへ輸出するなどして、日本国内では、売れ残りや古着が大量に溢れている状況は目にしませんが、アフリカの国の中には、繊維製品の輸入を禁止している国も出てきています。
機会損出を恐れて大量在庫を持つ
アパレルとしては、在庫が枯渇して、店頭に置く商品が無くなると、その棚に他のブランドの商品を置かれてしまうので、在庫が不足することを最も恐れます。もしも、自社の棚に他のブランドを置かれて、そのブランドの方が販売実績が良ければ、自社の売り場は必然的に狭められてしまいます。
また、ファッションは流行などにとても敏感なので、売れる時に十分な在庫を確保しておきたいと言う心理も働くのでしょう。
このことを恐れるあまり、余分に余分に発注すると言う流れになってしまうのです。余分に発注した結果が過剰在庫で大量の売れ残りが発生して、焼却処分になる訳です。

リードタイムの長さが過剰在庫の元凶
トヨタのカンバン方式のように売れた商品だけを生産する仕組みなら、過剰在庫は発生しませんが、繊維業界は、カンバン方式のようなプル型の生産方式ではなく、適当な需要予測で、在庫を積み増すプッシュ型の生産方式なので、需要予測を間違えると大量の在庫が発生する仕組みになっています。
さらに問題を大きくしているのが、原糸メーカーから縫製工場まで生産拠点が海外に移転してしまっていて、船での輸送も含めてとてもリードタイムが長いために、来シーズンの企画から納品までのリードタイムがとても長いので、直近の流行に対応して生産を調整するなどの木目細かい対応が出来ないことです。
生産した商品の半分以上を廃棄処分してしまう業界の体質は異常と言って良く、SDGsの流れに全く逆行する仕組みを何の疑いも無く続けている体質を改めなければいけません。
生産した商品の半分以上を廃棄すると言うことは、廃棄を無くせれば製造原価は2倍になっても良いと言うこと
生産した商品の半分以上を廃棄していると言うことは、売れる商品だけを作れば、製造原価が2倍になっても現状と同じ利益を確保出来ると言うことです。
廃棄しなければいけなくなるのは、服にしてしまうからで、原反の状態で、生地に鋏を入れなければ、倉庫に残ってていても、次の企画に生かすことが出来ます。
海外への発注を半減させて、追加フォローを国内の縫製工場を使う
生産した商品の半分以上を廃棄している現状からすると、海外の生産拠点に発注している生産を半減させて、店頭の在庫をaiなどで管理して、追加発注はリードタイムの短い国内の縫製工場を活用して、廃棄を極力少なくする努力が必要では無いかと思います。
海外の生産拠点への発注単価は発注ロットが減ることで多少高くなると思いますが、廃棄ロスを考えれば何も問題は無いはずです。
国内の縫製工場には、社員に十分な待遇を保証できて、長期的な継続が可能な工賃を提示して、短納期の対応をしてもらうことで、大量廃棄は回避できると思います。瀕死の状態の国内の縫製工場をこのまま放置しておけば、海外の縫製工場に大量発注した商品を廃棄する流れを変えることが出来ず、世界の環境保護団体などから批判される業界になり、廃棄の多い企業に対して不買運動が起こる可能性もあります。
このような最悪の事態を回避するためにも、海外の大量生産と国内のフォロー生産を組み合わせた、廃棄を大幅に削減する仕組みの構築が急務だと思います。
一昔前までは、大量生産、大量消費と言われて、ヒットしたブランドを誰もが着ている時代もありましたが、今は、消費者のニーズが多様化していて、大量消費はされなくなっているので、現在の生産体制では、消費者のニーズに合わなくなっているとも言えます。